倣日月四季山水図屏風制作のまとめ

 

2025年 大阪天野山金剛寺様の所蔵する国宝 日月四季山水図の倣作を 令和7年度 今治市大三島美術館企画展 森山知己 和様に倣う 展で発表させていただくことができました。制作の経緯、また気づきなど。

太陽の描かれた右隻の倣作を2022年に行いました。

 倣日山水図制作 10/23//2022  材料技法

2020年8月、縁あって天野山金剛寺の国宝「日月四季山水図屏風」を実見させていただく機会をいただきました。作者不明ながら多くの方々、先人が日本らしい絵画として認めていた絵画です。私も1989年東京国立博物館で開催された<「国華」創刊100周年記念特別展 室町時代の屏風展>で拝見して以来、ずっと気になり好きな絵画でした。

2025年2月、左隻の制作をスタートさせました。

屏風は、2022年に制作した折に用いた屏風の対となるものです。
屏風の大きさ、縦横比も実物と違うため、制作に用いる屏風に合わせてニュアンスがなるべく変わらないように構図、描き方を変更した小下図を作成しました。

原寸大の大下図は作らず、小下図をもとに実物の屏風に直接木炭で当たりをとって拡大し写しました。


木炭の当たりを手がかりに墨描きを行いました。実物の画面のトーンを手がかりに墨による明暗も加えています。また波の線などは当たりのみに止め墨描きは行っていません。


墨描きの終わった状態です。銀箔を貼る予定の空、銀箔の穴開き、月とのコントラストも考え薄墨をベースとして塗っています。波線と同様に松の幹なども墨描きはせず、木炭の当たりのままにしています。銀箔に隠れるはずの雪山の松も同様です。

空を除いた部分に黄土+胡粉+墨の地塗りを行っています。はたして昔描かれた当時の地塗りがこのようであったかはわかりません。おそらく実物はより淡い色合いであったと思います。


下塗りを行っている様子です。

下図作り> 墨描き > 地塗り > 下塗り
ここまでの作業を終えたところで、Webに倣作の記事をアップすることにしました。

「下塗り」などの制作のプロセスについては、「無い」から始める日本画講座 をご参照ください。基本的にこのプロセスで作業を解釈し対応しています。

また、松の形や描法、雪山、滝などの処理などに対する考え方は、以下記事を参照ください。

日本の肖像画 7/26//2010  材料技法 

日本画の基本と粉本について 8/25//2010  材料技法


日本画ってなぁに? ブログでの記事スタート

 「日月山水図屏風」左隻の倣作 その① 3月 17, 2025 

左隻制作に至る経緯紹介、また当初、銀箔の硫化を使った表現を試みることを念頭に作業を進めたことなどを紹介。


以下、当初構想についての参考資料

参考画像1 空と海に突き出た松の生えたスペースの表現。

当初・空は硫化し黒い状態に。小さな銀色のドットを残し、星空表現を構想した。


上記構想を実現するための実験ピース。
銀色に残すドットの大きさについては要再考。

この他、月の表現について、箔の厚みによる銀色の違いなどの資料

霧吹きにドーサ液を入れてドットを作成


*大三島美術館 和様に倣う 展で資料展示



 「日月山水図屏風」左隻の倣作 その② 3月 23, 2025

薄い銀箔の使用と、銀箔硫化表現について。





 「日月山水図屏風」左隻の倣作 その③ 3月 30, 2025 

銀泥を使った波線の描画。

銀箔硫化表現についての再考。



 「日月山水図屏風」左隻の倣作 その④ 4月 08, 2025 

波に金泥の片暈し。銀箔の砂子表現。
銀箔硫化表現を行わないことを決定。




「日月山水図屏風」左隻の倣作 その⑤ 4月 10, 2025 

左上部雲の金箔貼り、硫化酸化防止皮膜(ドーサ液)




「日月山水図屏風」左隻の倣作 その⑥ 4月 18, 2025 

雪山の上塗り、松の下塗り、描きこみ。
岩絵具を焼く作業、上塗り






描き込みの作業。岩絵具の積層。
盛り上げ絵の具の効果。





日本の色表現について。
細部の描き込みをすすめる。





細部の描きこみ継続。
屏風形状への関心。銀箔の重ねについて。





岩礁の描きこみで気づいたこと。
倣うことの意味。
屏風は体験を創り出す装置。

大三島美術館での展覧会での展示について。


べあもん 加賀さんのスタジオに屏風を持ち込んでの撮影
照明と屏風の見え方、形状について。






大三島美術館出品作画像紹介。





11月8日(土)大三島美術館
夜の特別感紹介の様子から照明と屏風の見え方。
体験を作り出す装置としての屏風。






参考・右隻を照明を落として撮影


参考・左隻の照明を工夫して撮影


参考・左隻を照明を落として撮影


参考・大三島美術館 夜の特別鑑賞会


2025.11.25

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