「日月山水図屏風」左隻の倣作 その⑨


 屏風全体に色が入りました。残す作業は、細部の描き込みとなります。全体のバランスを確認するために、床に平置きしていた屏風を平面として立ててみました。

夜、天井からの光による状態です。

この後、夜中、岩礁に群青と焼いた緑青の色を入れました。描き入れて思ったのは、この彩色による想定以上の効果です。屏風の形状と密接に関係した形、岩礁の彩色を実感しました。


翌日午前 屏風らしく折り曲げた形にして、画面左方向からの光での見え方です。この光線からの方向では、月が見えなくなります。画像では砂浜らしき陸地についても見えにくい様子ですが、肉眼では、銀箔と波、海は明確に異なった質感で、画像のように同一化することは有りません。

視線は、思う以上に滝の流れを遡っていくことにより、奥へ奥へと導かれ、雪山に至ります。銀箔による空が思う以上に特別な存在として感じられるように思いました。

時間の経過とともに、光線の方向性、色が微妙に変わりました。見る角度を変えての撮影です。


夜、天井からのメインの照明を消して、右からの光のみにして撮影してみました。屏風の面毎による明るさの違い、人間の眼にはこれほどのコントラストは感じられません。月が輝いているように見えます。砂浜が月に照らされて明るく輝き、海が暗く沈みます。同様に闇に包まれる山並み、滝によって海に注がれる水の流れも、月に照らされて闇に輝いているようです。

月は、他の空と違い、銀箔二枚重ねとしていますが、一枚のみで仕上げた方がより空との違いを感じやすかったかもと思います。どちらが良いかについて、2種類作って見比べてみないと確かなところはわからないのですが、これも今回こうして制作したからこそ気になったことの一つです。

さて、この 「日月山水図屏風」左隻の倣作 制作のリアルタイムレポートも9回となりました。次回の⑩回は、「細部の仕上げについて」作業レポートの最終回の予定です。

コメント

このブログの人気の投稿

「日月山水図屏風」左隻の倣作⑩最終回 展示予定

作家の手業VR制作

「日月山水図屏風」左隻の倣作 その①