「日月山水図屏風」左隻の倣作⑩最終回 展示予定
中央下部にある岩礁を描きこみました。描くことで、改めてこの時代の中国絵画的な表現を強く感じることになりました。これも今回の収穫の一つです。
海の表現、波頭、波の描き方など、公開されている科学調査(東京文化財研究所 真言宗御室派大本山 天野山金剛寺所蔵 国宝 日月四季山水図 光学調査報告書)による銀泥と金泥によって実際に描いてみることで、今回、その仕上がりの品の良さといったものを実感することになりました。また盛り上げ絵の具の上に銀箔による表現、銀砂子なども同様です。
光がどちらの方向から来るのかによって月が現れたり、消えたり。また空の銀箔が、夜の空間に見えたり、そうではなくなったり。月のみに鉛白の下塗りがあることによる大きな見え方の違い。今回結果的にそのように見えたことは大きな収穫でした。同時に銀箔による陸地の表現も月に照らされ輝く砂浜に見えると同時に海が一段暗く見え、いかにも夜の海らしく感じたり。波頭に貼ってある銀箔の光の反射についても、盛り上げ絵の具の上に貼ってあるからこそ多様な方向からの光を反射するのだと納得したり。
500年が経過した現在眼にすることが出来る屏風のそっくりなコピーを作ることが描く目的ではありません。この絵画の持つ魅力、人を引き付ける引力のようなものへ至る秘密を描くことで見つけ出したい、実感したいというのが偽らざる気持ちです。
絵描きとして、実際に描くことで知ること、得られること。「倣作」の意味についてを今回改めて確認する作業となりました。以前、幸運から行うことが出来た尾形光琳の紅白梅図屏風の倣作のおりに出会えたことを今回は意識的に行えたのです。琳派!に見られるような、私淑という継承が有り得るのだと。
絵の具の扱い、塗り方などは、ある意味で狩野派であったり、土佐派に包含されるものでしょう。ことさら特別のことでは有りません。何に「絵描きとして」共感しているのか。あえて言うなら、それは「この国の持っている豊かさへの共感」といったものではないかということなのです。
金雲も金箔を貼った後、最終的に金泥で照り押さえをしました。光の反射が一段押さえられ、水の流れ、波頭に使用した銀箔がより効果的に見える様に思いました。
日月四季山水図屏風 左隻の倣作作業レポートは、今回が最終回です。このあと、この屏風は表具師の方にお願いして、表の本紙に描くことで生じた張力に合わせて裏布を新たに貼り、丁番のオゼを仕上げ、縁を打ち付け、金具を付けて完成です。
先に制作した右隻とともに一双として、この秋に今治市大三島美術館で行う予定の個展で展示予定です。この個展では、2011年末から2012年初頭にかけて制作した尾形光琳の紅白梅図屏風の倣作、オリジナル作品である海中図、緋鯉図屏風、白象図、水の記憶、山陽新聞社蔵の醍醐桜、倉敷不洗観音寺の襖絵などもそれぞれ所蔵家のご協力、ご支援により、一同に展示予定です。以下は、現在決まっている準備中の情報です。
今治市大三島美術館企画展 「森山知己 日本画展(仮題)
会場:今治市大三島美術館
会期:2025年10月4日(土)から12月7日(日)まで
休館日 毎週月曜日 祝日の場合は原則翌日振替
森山の作品解説 2025年11月8日(土)午後予定
★照明をコントロールして屏風作品を見て体験する特別なイベントも出来たら・・・
と、計画中
ご高覧いただければ幸いです。
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