講義・実技 箔の厚みと硫化表現 を行いました
日本美術家連盟の主催する公開講座の講師を9月24日行ってきました。講義したことを参加者のみなさんが実際に作業を行い体験する趣向です。(★使用している講座画像は日本美術家連盟様の撮影によるものです)
随分昔の話(2011年)になりましたが、いろんなご縁をいただき、尾形光琳の描いた国宝 紅白梅図屏風、あの「黒い流水」を試して描く機会をいただきました。またそれは、結果的に私自身のテーマであるこの国の絵画、伝統とは何か?その問いの答えにつながる手がかりとなったのです。
昔、日本画滅亡論が言われたその頃、その魅力は「線と色彩」であると当時行われた美術専門誌のアンケートで多くの日本画家、洋画・版画家が答えたそうです。取り組む手法は違えど、この国の絵画文化において共通する何かを見つけていたことが想像されます。一方敗戦は、明治維新とは異なる西欧化への大きな動きとなり、それ以前との断絶と言って良い程の状況を生んだとのことです。戦後生の私が日本画に出会い、学ぼうとした頃には、日本画の壊すべき伝統とはなんだろうと改めて考えるような状況となっていました。
「線と色彩」のひとつ、「線」についてがまず最初のテーマになりました。琳派と呼ばれる流れの中に、風神雷神図を直接の関係なく、時を越えて描く事例が認められました。その髪の毛の描写、線にまず注目しました。
「そ」の話 各画家における風神の髪の毛の描法を比較する中で「線の秘密」への糸口へとしたのです。
線の秘密・水の時間 尾形光琳の紅白梅図屏風と同じ大きさで、また同じように描こうとすることで、描く身体を感じることになりました。それは「毛筆」を使うことによって明らかになるのです。尾形光琳の硫化表現は、筆跡によるマスキング、運筆について注目することになりました。
この間、墨、筆や膠、刷毛、表具、これらに手がかりとなる要素を次々に見つけました。
「たらし込み」における、箔の厚みで変わる発色の違い。梅の枝の長さと描く時間、水の量の関係。「線と色彩」について、墨や、胡粉の成り立ち、絵の具の良い発色、色彩について毛筆の使い方がベースとなっていることがわかって来たのです。尾形光琳の紅白梅図を同じ大きさで描いたからこそ知ることが出来たことでした。
講義ではこのあたりを図や筆の動きのアニメーションによって紹介しました。
そして紅白梅図に関わることで、王朝美の復活、江戸という時代への理解についても手がかりを得られたように思います。当初、センスよくカッコいい尾形光琳の紅白梅図屏風!という私の認識でしたが、再現制作をすることで、この国の伝統について知る手がかりを得る重要な存在となったのです。また、同じモチーフを描くことの意味、同じ大きさで描こうとする意味などにも気づくことになりました。「倣う」という意味についても考えることになったのです。
硫黄粉の銀箔との直接反応による漆黒と言って良い黒と銀の対比、硫黄ガスを使った反応手法による、色表現の世界「燻す」ことの表現への可能性を試してもらいました。
工業製品の硫黄(純度が高い硫黄)ではない、湯の花(硫黄を含む)などでも反応が可能であること。まだガスを使うことのメリット、今日的な表現の可能性などをお話、体験してもらいました。
ちなみに、2011年とり組ませていただいた尾形光琳作 国宝 紅白梅図屏風の倣作、またその技術を使い描いた「白象図」そしてこれもまた銀箔の使い方、硫化技法について使用を当初考え構想した 日月四季山水図の倣作など、出品の展覧会 「和様に倣う」に出品、実物を見ていただけます。それぞれの技法実験ピースなども展示されます。
さて、先に紹介した大三島美術館での個展の他に、倉敷 きび美ミュージアムでも個展を開催します。また、10月には広島県熊野町の筆の里で行われる展覧会の付帯事業でお話をせせていただきます。岡山県井原市にある華鴒大塚美術館の収蔵品による展覧会です。
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この展覧会に合わせて
10月26日(日)13:30から15:00
広島県安芸郡熊野町の 筆の里工房で
という対談を館長の名児耶明さんとさせていただく予定です。個人的には、日本画の線と色彩、これらが毛筆とどのように関わるのか、そんな話が出来たらと思っています。問い合わせは筆の里工房まで。ご案内まで。
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