燻による流水表現の追試


 昨年、NHK-BS 解剖!マスターピース 尾形光琳「紅白梅図屏風」に出演させていただいたおり、湯の花を使い、それを電熱器で温めることで発生するガスを用いて銀箔を燻す技法を実験しました。銀箔を硫化させて「黒い水流」、流水表現を作り出したのです。このサイト記事で、その実験課程、結果なども紹介しましたが、狙い通りに出来た部分もあり、また狙ったとおりに行かないもどかしさも感じたというのが正直なところでした。

このあたりをスッキリさせたい!。

今年、6月10日より岡山天満屋で3年ぶりの個展を開いていただくことも有り、その出品作を作る過程としてこのあたりの追試を試みました。

■注意!! ごく少量(花火程度)とはいえ、硫黄を気化させることで行う実験です。予期せず発生したガスを吸い込んでしまうなど実験者自身も危険を伴うこと、また漏れたガスによる匂いなどで周辺の環境に迷惑、影響を及ぼす可能性があります。これらのことが理解できない、またその対応が考えられない方は論外です。安全に配慮した実施が出来ない、可能性が考えられるケースでは、絶対に行わないでください!!。

トップの画像は、反応後、実験用ビニールハウスから取り出したばかりの様子です。ほぼ、狙った結果を出すことが出来たように思います。右側の短冊は意図的にブルーの段階で取り出しました。左側はより反応時間を長く取ったものです。

今回用いた実験用のビニールハウスです。

これまでとの違いは縦方向に大きくしたことです。「熱して気化させた硫黄ガスは温かい」当たり前の事ながら、ガスはまず上昇するのです。上部の濃度が必然的に早く上がることが想定されます。

また外気温についても注意しました。急激に外気温で冷やされる状態は避けることにしたのです。落ち着いた天候、外気温の元で実験を行いました。銀箔部分をなるべく上方に設置しています。

また、電熱器の発する熱によって、ビニールが溶ける危険も考慮し、上方にビニールハウスを伸ばすことで回避しました。(高さ90cmを確保しました)


実験ピースを入れたビニールハウス内部の様子です。銀箔面にドーサ液で描いた線が太陽光線の反射状況でわかると思います。(準備はこれまでと変わっていません)


電熱器を使って熱したのは、今回は「硫黄粉」です。

「湯の花」の場合、同じように量り取ったつもりでも毎回同じにならないのは、その箇所の硫黄含有が一定ではないからと推測したのです。もちろん硫黄以外の物質の存在の影響も無視できないと思われます。

今回は、純粋な硫黄扮を使うことで考慮する要素を減らしたのです。
(最初の試み(2011年)のあとに行った気化による実験で用いたのもこの硫黄でした。ある程度安定した反応結果を得られた経験がありました)

狙った色が出たところでその都度実験ピースを取り出しました。


最初に紹介した画像、左側のピースに、墨に白緑を用いたたらし込みによって描いた梅の枝や胡粉による白梅、辰砂による紅梅を実際に描き加えてみました。もしかしたら、光琳が描いたのも当初このような状態だったのかもと思える一つの結果となったように思います。もちろん、2011年に行った制作のように、反応結果、銀をより黒くするためには、直接反応を使うほうが効率的であり、また確実です。今回の実験、私個人の感想ではありますが、しっくり来る見栄えの一つとして捉えられるように思いました。(今回実験制作したピースにそれぞれ何かしらを描き加えたものを6月10日からの岡山天満屋美術画廊・個展会場で展示予定です。興味を持たれた方には実際に質感、色等を見て確認いただける機会となります。)

ある程度密閉できる場所に屏風を入れ、そこに火鉢を設置し、その火の中に湯の花、もしくは硫黄を入れて燻すことで可能な技法。時間の経過とともに、反応はより進み、硫化銀の結晶状態はより質感変化を伴ったものになり、銀色の線の部分は、徐々に金色から茶系にと変化していく・・・。約300年の経過、途中水が屏風にかかったとの話もあるとのこと、表面のマスキングが不安定になっての部分的色変化もあったかもしれません。

ということで、実験は終了です。

■注意!!安全に配慮した実施が出来ない、もしくは可能性が考えられるケースでは、絶対に行わないでください!!。

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