「日月山水図屏風」左隻の倣作 その④
波の描線を銀泥で行いました。その後、波動を強調するポイントの線には金泥による片暈しを加えています。波頭に貼った銀箔の硫化、酸化止めを兼ねたドーサ液を塗り、それを接着剤として、中程度の細かさの銀砂子を蒔きました。 銀砂子を撒いた直後の様子です。この後、接着剤であるドーサ液が乾いたら、丸まったり、定着せず浮いている砂子を刷毛を当てて払い取り除きます。予定通りに和紙の上に定着したものは、金属光沢となり残ります。 銀箔を貼った月、そして空。また砂浜と思われる陸地の一部。これらの銀箔について、硫化による技法を用いて、暗い空の表現、そして砂浜の小さな光の粒がたくさんあるような表現をと当初思い、作業を進めていました。画像は、その作業に用いるために準備した型紙です。 描き進める内、貼った銀箔が鉛白による下塗りをした月と、それ以外の空の見え方の違いを生み、また陸地の部分も周りの環境を映すことによって同じ銀箔とはいえ、空とは違う様相を見せることに気づきました。 屏風らしい折り曲げた状態で設置し、お寺のお堂、薄暗い場所で横方向からの光線で見ること、また見る人間は、床に座り低い位置からの視点で少し見上げるといったことを、すべて同じには無理ですが試してみて、屏風に貼られた銀箔が、置かれた場所を映し出して暗い宇宙に見えたり、また雪山が逆光でシルエットに見えたりすることに気づきました。 月が光の状況で現れたり、消えたり。空は昼になったり、夜になったり。 砂浜は光の状態で、月の光によって輝いてる様子に見えたり、暗く、海の明るさにシルエットとなったり。 夜であり、昼でもある。また月が現れたり、消えたり。季節も秋であり、冬であるといったこの屏風。室町時代、宗教に関係する儀式に用いられた絵画ということです。先に上げた要素を含み、またそれら狙った表現であったのではと考えるようになりました。 銀箔をこのまま残すことにしました。 実際に描いてみての私なりの実感です。 このあと、左上の雲に金箔を貼ります。 波頭には、もう一段細かい銀砂子を蒔く予定。 これらが終わり次第、雪山、緑の山、滝の周り、砂地の上の松など、絵の具を使った具体的な描写が始まります。先が見えてきました。