美術運送という仕事
日本画と呼ばれる絵画について紹介する中で、屏風や掛け軸といった絵画と一体となる「形」にも触れてきました。昭和なら「屏風」は無理でも「掛け軸」はある程度身近な存在だったように思います。それでも、掛け軸の取り扱いについて、不安なく行えたという方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?。家の形、住環境も変わり、現在では、「触ったことはない」「触るのも怖い」という方々が多いように思います。
美術展では、これら掛け軸、巻物、扁額と呼ばれるもの。また額装された作品や彫刻、資料類などに加え、最近ではオブジェなどの作品むき出しのものも増えました。それらを収蔵庫はもとより、作品の借用先などから安全に運び、そして展示作業、そして返却までが一連の美術運送の仕事となっています。
作品梱包の様子です。作品の安全が一番、梱包資材にも独自の工夫があります。
巨大な屏風、立体作品などでは、その作品輸送専用の箱を作成することがあります。木製であったり、段ボール製だったり。下記は手際よく現場で専用箱を作成している様子です。
手際よく、作品サイズに梱包のための資材(クッション)分も含めた必要な最終寸法を加味した箱制作が手際よく現場で行われました。
掛け軸の扱い 掛け方
作品に加えて、共箱と呼ばれるものがあります。特に工芸などでは、作品自体はもちろんですが、その由来が重要な意味を持ったりします。重要な情報が書かれたそれ、ある場合はその大切さを箱の作りで現していたりすることもこの国の文化の姿です。 昔、海外の美術館、博物館では、残念ながら捨てられてしまった事象があったと聞きます。箱書きといったものに対する注目も重要なのです。
今回、紹介したのは、2024年1月に倉敷芸術科学大学で行われた博物館学特論での特別な授業の様子を見学・取材させていただいたものです。
授業 博物館学特論
教員 華鴒大塚美術館 三宅 利枝学芸員
講師:NX 日本通運株式会社 岡山支店
美術品梱包輸送技能取得士 2 級 千葉英輔氏・阿部秀紀氏
〇博物館資料の取り扱いと輸送、展示について取り上げ、博物館活動を支える専門技術者を知る
〇美術品梱包・輸送・展示について(岡山県下の活動)
〇美術品取扱い者の心得え
〇梱包・取扱いのデモンストレーション
〇美術品専用輸送車
その他
「物流における2025年問題」といった言葉を聞きます。その影響を身近に感じることも多くなりました。美術展の開催に際して、美術運送はなくてはならない仕事であることをご理解いただけたかと思います。
展覧会の開催がこの問題と無縁ではないことを知っていただくこと。<美術品梱包輸送技能>美術運送という仕事自体が美術に密接に関わった仕事であることを紹介したいと思いました。
学生が日常でこのような仕事にふれることは少なく、仕事としての魅力にも触れられたことと思います(そのような感想を聞くことが出来ました^^;)。
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