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「日月山水図屏風」左隻の倣作 その⑦

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画面全体を見渡して、大きな階調、色のバランスをとりながら完成に向かいます。下塗りの細かく明度の高い粒子の絵の具から徐々に粒子の大きな岩絵具を重ね色調を作っていきます。昔、大正生まれの先生から岩絵具を活かした使い方をしたいなら、プロセスとして3層から4層程度で使うのが好ましいと聞いたことがあります。 いくらか経験を積んだ今、私もそのように思うようになりました。実際、昔の絵師の方々もそのように使う中で、何かしら自分らしさを作り出していたように感じます。 尚、緑の山の色合いが肉眼で見るのとは少々ことなります。天然緑青の色を写真で出すのはなかなか難しいのです。 滝が海に流れ落ちるあたりも少しづつ形になってきました。銀箔の輝き、線の動きによる表現の面白さを感じています。 色の重ね、形の表現など、ふと眺めていて昨年広島県立美術館で見た児玉希望の絵を思い出しました。中国地方の出身、自然の捉え方、京都の絵、土佐派的な何かとのつながりでしょうか。 上塗りの終わった雪山に松や木々を描きこみます。大きな面積の平面的な塗り方に対して、盛り上げを使った細部の姿です。 迷うことは少なくなった気がします。ひたすら描き進めています。(実際は、身体・体力的な衰えを感じるばかりですが・・・)残りあと僅か・・・。

「日月山水図屏風」左隻の倣作 その⑥

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 雪山の上塗りを胡粉で行いました。画面左側は、まだ絵の具を塗ったばかりの状態です。湿った状態では下塗りの絵の具が透けています。絵の具が乾くことによって白い色として発色するのです。 銀箔を貼った空の様子、また砂浜と思しき陸地。松を描き加えました(下塗り)。 光の当て方で見え方がかなり変わります。滝の廻り、具体的な色の深みなどを加え始めました。藍、藤黄(ガンボージ)、洋紅など染料系の絵の具で画面に奥行きを作ります。 山の緑など、染料によって深みを加えた後、その上に塗る天然岩絵具(上記画像は緑青)です。熱を加えて酸化させることで色味の明度と彩度を下げます。これから山肌などに塗る予定です。 画面が急に動き出したように感じます。作業の結果がすぐに現れるようになりました。 このあと、雪の積もった樹木を加えたり、松の上塗り、明度と彩度をあわせた緑青を塗る予定です。

「日月山水図屏風」左隻の倣作 その⑤

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 左上部の雲に金箔を貼り終え、波頭の砂子も複数回蒔き終えました。画面全体の金属箔使用の箇所については、作業終了です。今日は、滝の流水部も含め、これら金属箔部分、加えて金泥、銀泥による線描箇所も含めて、酸化、硫化防止のための被膜( ドーサ液 :水に膠と硫酸カリウムアルミニュウム12水を加えて作った水溶液)を必要箇所に塗りました。 上記2つの画像を比較、視点が変化することによって(屏風らしい谷折り山折りの状態に対して)たとえ平面であったとしても様相が変わって見えることがご理解いただけるのでは無いかと思います。 雪をいただいた山、白に銀の取り合わせ、銀色に輝く波頭、砕けた波、乳白色の地に動く波、わずかに入る金泥によるアクセント。雲に貼られた金箔の輝きも、この先に塗られる緑青や群青といった岩絵具とのコントラストを期待させてくれます。 雪をいただいた山、雪が積もった木々、緑深い山の木々、砂浜らしき海岸に生えた松の数々、岩礁、滝の廻り、具体的に描きこむ段階が来ました。

「日月山水図屏風」左隻の倣作 その④

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 波の描線を銀泥で行いました。その後、波動を強調するポイントの線には金泥による片暈しを加えています。波頭に貼った銀箔の硫化、酸化止めを兼ねたドーサ液を塗り、それを接着剤として、中程度の細かさの銀砂子を蒔きました。 銀砂子を撒いた直後の様子です。この後、接着剤であるドーサ液が乾いたら、丸まったり、定着せず浮いている砂子を刷毛を当てて払い取り除きます。予定通りに和紙の上に定着したものは、金属光沢となり残ります。 銀箔を貼った月、そして空。また砂浜と思われる陸地の一部。これらの銀箔について、硫化による技法を用いて、暗い空の表現、そして砂浜の小さな光の粒がたくさんあるような表現をと当初思い、作業を進めていました。画像は、その作業に用いるために準備した型紙です。 描き進める内、貼った銀箔が鉛白による下塗りをした月と、それ以外の空の見え方の違いを生み、また陸地の部分も周りの環境を映すことによって同じ銀箔とはいえ、空とは違う様相を見せることに気づきました。 屏風らしい折り曲げた状態で設置し、お寺のお堂、薄暗い場所で横方向からの光線で見ること、また見る人間は、床に座り低い位置からの視点で少し見上げるといったことを、すべて同じには無理ですが試してみて、屏風に貼られた銀箔が、置かれた場所を映し出して暗い宇宙に見えたり、また雪山が逆光でシルエットに見えたりすることに気づきました。 月が光の状況で現れたり、消えたり。空は昼になったり、夜になったり。 砂浜は光の状態で、月の光によって輝いてる様子に見えたり、暗く、海の明るさにシルエットとなったり。 夜であり、昼でもある。また月が現れたり、消えたり。季節も秋であり、冬であるといったこの屏風。室町時代、宗教に関係する儀式に用いられた絵画ということです。先に上げた要素を含み、またそれら狙った表現であったのではと考えるようになりました。 銀箔をこのまま残すことにしました。 実際に描いてみての私なりの実感です。 このあと、左上の雲に金箔を貼ります。 波頭には、もう一段細かい銀砂子を蒔く予定。 これらが終わり次第、雪山、緑の山、滝の周り、砂地の上の松など、絵の具を使った具体的な描写が始まります。先が見えてきました。