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スタジオでの作品撮影

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 制作した「日月四季山水図」左隻の倣作、仮の縁を外し、裏布を新たに貼り、オゼに装飾紙を貼って丁番を仕上げ、漆塗りの縁を打ち付け、装飾金具を付けて仕上げる表具師(小村芳潤堂さん)の作業が終わりました。そして、昨日はスタジオに持ち込んでの写真撮影でした。  屏風の仕上げでは、当たり前のように3年前に制作した右隻と同じ仕上げをと求めたのですが、この3年の間にその縁を作っていた工房は廃業したとのことで手に入らず、できるだけ同様のものをと、材料問屋の方(白神紙商店さん)にいろいろと手を尽くしていただくことになりました。結局、縁の漆塗りは京都でとなったそうです。意識していたはずなのに、今回のことは改めて表具の置かれた状況を実感することになりました。 我が家のアトリエから運び出し、仕上がった状態で久々に見る倣作・左隻の様子です。先日の大阪市立美術館での 国宝展 に出向いて確認出来たことを思いながら見直す事になりました。大きさも違えば、もちろん構図も違います。現状では黒く見える空など、おそらく銀箔が用いられていたであろう箇所には真新しい銀箔の輝きがあります。果たして本当にこの様であったかどうかは正直わかりません。一双にしての 展示 、どのように見えるのかを楽しみにしたいと思います。 「日月四季山水図」屏風・左隻の倣作に続いて取り組んだ 秋の展覧会 「きび美ミュージアム」出品予定の「水の記憶」シリーズの六曲一隻屏風です。今回は墨による制作です。こちらも屏風としての仕上げも終わり、撮影となりました。(画像はアトリエで制作途中の様子です) 撮影は日頃からいろいろとお世話になっている「べあもん」さんです。絹や和紙の素材感、箔を印刷物でどのように見せるかは、撮影が大きく関わってきます。 プロとして撮影全般、絵画や工芸品だけではなく、モデル・商材カタログの撮影などもされており、撮影時には撮影という仕事について教えていただくことも多いのです。もちろん昨今のテクノロジー、AIの利用についてや、もちろん機材の話もします。 誰もが持つスマートフォン、カメラはもれなく付いてきます。バズるという言葉が何を意味するのか、確かに評価されることに違いないでしょうし、それを求めることは、それぞれの向上心に繋がるような気もしますが、好き嫌いだけではなく、良し悪しといった視点もあったら良いなーという...

美術運送という仕事

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 日本画と呼ばれる絵画について紹介する中で、屏風や掛け軸といった絵画と一体となる「形」にも触れてきました。昭和なら「屏風」は無理でも「掛け軸」はある程度身近な存在だったように思います。それでも、掛け軸の取り扱いについて、不安なく行えたという方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?。家の形、住環境も変わり、現在では、「触ったことはない」「触るのも怖い」という方々が多いように思います。 美術展では、これら掛け軸、巻物、扁額と呼ばれるもの。また額装された作品や彫刻、資料類などに加え、最近ではオブジェなどの作品むき出しのものも増えました。それらを収蔵庫はもとより、作品の借用先などから安全に運び、そして展示作業、そして返却までが一連の美術運送の仕事となっています。 作品梱包の様子です。作品の安全が一番、梱包資材にも独自の工夫があります。 また、こうした作業では事前の作品の調査・状態チェックも欠かせません。下記画像は、学芸員による輸送前の作品調査の様子です。絵の具の剥落の危険性なども含め、気になる箇所など、詳細なレポートを作ります。 巨大な屏風、立体作品などでは、その作品輸送専用の箱を作成することがあります。木製であったり、段ボール製だったり。下記は手際よく現場で専用箱を作成している様子です。 手際よく、作品サイズに梱包のための資材(クッション)分も含めた必要な最終寸法を加味した箱制作が手際よく現場で行われました。 紐のかけ方も美しい。 掛け軸の確認の様子 掛け軸の扱い 掛け方 巻物の扱いの様子 作品に加えて、共箱と呼ばれるものがあります。特に工芸などでは、作品自体はもちろんですが、その由来が重要な意味を持ったりします。重要な情報が書かれたそれ、ある場合はその大切さを箱の作りで現していたりすることもこの国の文化の姿です。 昔、海外の美術館、博物館では、残念ながら捨てられてしまった事象があったと聞きます。箱書きといったものに対する注目も重要なのです。 貴重な美術品を運びます。学芸員の方の同乗も考慮された美術運送 配送用トラックです。 固定のための仕組み、空調も完備しています。 今回、紹介したのは、2024年1月に倉敷芸術科学大学で行われた博物館学特論での特別な授業の様子を見学・取材させていただいたものです。 授業 博物館学特論   教員 華鴒大塚美術館 三宅 利枝学芸員 講...